EP.1 狗牙家

2/13
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
どれくらい寝てただろうか 何やら周りが騒がしい 自分達はまた研究所にいるのか それを確かめるべく、ゆっくりと目を開く ぼやける視界がまず捉(とら)えたのは、一緒に逃げて来た少女だった 「(マリ…ア?)」 ガバッ! 少女の名前が出た途端に勢いよく起き上がる 急いで周りを確認する 見慣れない場所だった 研究所に戻った訳ではないことを確認すると、今度は騒がしい所に目を向ける 真後ろにいたので体ごと回す 何やら男性と女性が言い争っているが、ロシア語しかわからない少年にはなんと言っているか聞き取れない そして二人とも白い犬の尻尾と耳が生えていた (あれ、人なのか?) 二人とも尻尾と耳が生えている以外人間だ しかし頭の上に犬の耳があるため、本来人間にあるべき場所に無い 服装も、白い袴に赤いもんぺ(?)で、巫女のような服を二人とも着ている やがて女性が少年に気付き、話を切ってこっちにやってくる 「ごめんね、起こしちゃった?」 ちゃんとロシア語に直してくれた 「あ、いえ、大丈夫です」 (綺麗な人だなぁ) 腰まで伸びた黒髪は、屈んできた女性の肩を撫でるように滑っていく おしとやかな女性だ、少年の第一印象はそれだった 「そう、よかった。まだ寝ててもいいわよ」 少年は隣の少女を見てから、少し考えた 「大丈夫です。それより、ここは何処ですか?」 「ここは日本さ、俺達は狗牙一家」 さっき女性と言い争っていた男性が笑顔でこっちに来る 女性と違って好戦的な印象を与える釣り目、身長は少年より二回り程高い。2mはありそうだ 「日本?いつの間に…」 「お前な、二日寝てたんだ。いつでもこっちまでこれる」 「二日も寝てたのか…」 「すやすや寝てたわ、あの女の子は一回目が醒めたけど、あなたを見て寝てしまったわ」 ところで、と女性の目が真剣になる 「何故あなたたちはあんなとこにいたのかしら?」 「それは…」 正直、あの事はもう忘れたかった 暫(しばら)く目が泳ぐ 「沙夜(さや)、そこらへんにしとけ。今はまだ聞くには早い」 「…、わかった」 「ん。で、お前、名前は?」
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!