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「おーい、健太。内線入ってるぞー、社長から。」
同僚に声をかけられた健太は企画書を作成するフリをして、荒らしコメントを連投していた2ちゃんねるを素早く閉じた。
「社長から?何だろう…。もしかして昇格の知らせ?もし昇格したら、久美ちゃんには仕事を与えず毎日お茶汲みだけさせて、君暇なんだねぇ…って嫌みを言おう。頑張り屋の久美ちゃんのことだ、すぐ辞めるなんて言わず暫くは頑張るだろうな。フフっ、シシシシシッ(笑)やがて心身共に疲れた久美ちゃんは会社の屋上から……」
「おい健太!!早くしろよ!!」
内線を取らず微笑みながら、妄想していた健太に同僚の怒声が飛んだ。
「はいはい…。すぐ怒鳴るのは使えない証拠ですよっと。……へいへい、こちら健太。社長すか?」
健太は必要以上に手馴れた感じを出しながら内線を取った。
「クビだ。」
突然の社長の一言を健太は理解することが出来なかった。
「は?なんて?あのね社長…、よく言うでしょ。指示は迅速に分かりやすく。報告連絡相談。ほうれんそうってね。そうそう、ほうれん草って身体に良いらしいですよ?鉄分が多くて血の巡りが良くなるって、昨日2ちゃんのスレで…」
「君はクビだと言ってるんだ。解雇だ。分かるか?細かい手続きは久美ちゃんに伝えてあるから、それに従うように。では、お疲れ様。」
それだけ言うと社長は電話を切ってしまった。ん、なに。なんなの。
「久美ちゃ~ん、お茶ぁ!」
間をおかずドンっと感じの悪い置き方でお茶がデスクに置かれた。
「旨いなぁ…いやぁ旨いなぁ。やっぱり久美ちゃんのお茶は旨いよ。何か秘密があるのかなぁ…久美ちゃんの何かが入ってるとか。ヒヒッ、違うか(笑)」
健太のセクハラに眉をひそめて軽蔑の眼差しを送る久美に、してやったりのニヒルな笑顔で応酬した。
忙しく働く同僚達にあえて聞こえるようズズー、ズズー、と大きな音でお茶をすすりながら健太は先程の会話について考察を始めた。
確かクビって言ってたな。クビねぇ…今のご時世、再就職も大変だろうに。可哀想だけど、何だか笑っちゃうな。フフン、ハハハハハ…うん僕笑っちゃう。クビになる馬鹿は誰だよ(笑)本当馬鹿だよなぁ…馬鹿…馬鹿は………俺!?
な、なんだと!?この俺が!?ありえん!!ありえん話だ!!
そ、そうだ。社長の話はいつも五割も聞いていないが、確か久美ちゃんに伝えたとか何とか…。確認せねば!
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