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「なんだこれは…」
そう呟いた安積の声は、大勢の人の嗚咽にかき消されてしまった。
「もうこんなに人が…」
黄色いテープが貼られてはいるものの、そのギリギリまで人が詰めかけているのだ。
「すみません、ちょっと通してください」
「警察です!道をあけてください!」
人のあいだをくぐり抜け、ようやく現場であるマンションの入り口にたどり着いた。
その中の一室のドアが開け放たれており、鑑識たちが行き来している。
「あ、ハンチョウ!水野さんと須田さんも!」
中に入った三人を見ると、若い刑事が駆け寄ってくる。
「桜井、状況は?」
桜井太一郎。係内の最年少で、死体が苦手。
しかし先輩や上司を素直に尊敬しており、可愛がられている。
人の長所を見つけるのが得意である。
だが過去にある事件の犯人に拉致監禁されたことが…。
「被害者は橋本雪也さん26歳。コードのようなもので首を絞められて殺害されたみたいです」
「死亡推定時刻は?」
「えと…午前4時過ぎですね」
「ずいぶん早い時間だな…」
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