麻生家

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『勉強』  とにかく、あの頃の俺は勉強をがんばった。あの日までは。それしか、父と母を喜ばす術を知らなかったから。ひたすらがんばった。がんばれば、父と母は僕を見てくれる。僕自身を評価してくれるようになると信じていた。だから、僕は勉強に没頭した。いい成績を取れば、父と母は僕を、人間としての僕を愛してくれると信じていたから。人は何かにすがらなければ生きていくことはできない。僕は勉強が愛に変わると信じていた。それにすがっていた。それしかすがるものがなかったから。でも、あの日、それさえ壊れてしまった。
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