14人が本棚に入れています
本棚に追加
『逃避』
そして、あの日──
勉強の成果が形になった。全国模試で一位を取ったのだ。これで父も母も、僕を愛してくれるんだ。僕は喜び勇んで模試の結果を持っていった。しかし、父親に模試の結果の紙を渡すと「それでこそ、麻生家の子供だ。次はもっとがんばるんだ」と、ろくに模試の結果も見ずにゴミ箱にそっと流し入れ、再び書類の整理を始めた。その間、父親は僕の顔を一瞬たりとも見ることはなかった。僕は何も言えなかった。見えないゴール。消えたゴール。ねぇ、僕はどれだけがんばればいいの?
中学校二年生の春、俺は鳥かごを飛び出した。俺はあんたらの思うような人間にはなれない──
―END―
最初のコメントを投稿しよう!