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「あっ!来た来た!おっせーよ、尊ぉ」
「おー……って、笹原も一緒だったのか」
あの後少ししてから二人でまたスタート地点に戻ると、走り終えた生徒達が支給されたスポーツドリンクを飲みながら談笑していた。
そんな中で俺の存在にいち早く気づいたカズが片手をぶんぶんと振り、ケイも顔を向けたかと思えば少しだけ意外そうに驚いた表情を浮かべる。
「途中で会ったんだ」
なるべく不自然にならないように、な?と笹原に同意を求めると素直に頷いた。そんな様子に、またもや驚いたようにケイは目を瞬かせる。
「つーか笹原、今日随分と大人しくねーっ? なんか顔もやけに赤い気ぃするし。なぁ?」
訝しげ、というよりもただ純粋に不思議そうな顔をして笹原を覗き見るカズに同意するようにケイが頷いた。
当の笹原は、というと……。
「……」
まさかの無言だ。
笹原が、無反応だ。
俺を含め、三人で顔を見合わせる。
地球がとうとう本気で滅亡するのかもしれない。
視線を戻せば、心なしか顔色が悪くなっている気がする笹原が。呼吸の乱れも激しい。
え。
ていうか、これってもしかして。
「……熱中症じゃね?」
カズがそう言ったのと同時に、笹原の体がゆらりと傾き--視界の端を通った黒い影。
ふわりと漂う、このシトラスの香りは……。
「……え、…風紀委員長?」
ケイが思わずといった感じで呟けば、ざわっと騒ぎ出す周囲。
そう。倒れそうになった笹原を支えたのは……紛れも無く風紀委員長である司さんだった。
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