詰らん意地は蛇の足。

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仲直り、というものをしてみようと思った。 別に史の言葉に影響を受けたわけではない……いや、悔しいが少しだけ。ほんのちょっとだけ、彼の言葉は身に染みた。 旭と喋らなくなってからまだ日は浅いが、日々に物足りなさを感じるのも事実で。 旭は中々に俺の中でデカイ存在だったらしい。そう感じるとちょっと照れ臭い。 いなくなってから初めて気付くことって、あるんだな。 ……本当に。 屋上を後にした俺は、数々の場所を覗きながら歩いていた。 旭を探すために。 まずは、そうだな。 「朝食のシュガートースト美味しかったよ」とでも伝えよう。 そんでもって、さり気なく謝ろう。 そうすればその後はきっと何もかも元通りだ。何の蟠りもなく、自然な仲直り。 そんなお気楽な考えを持っていた俺、何と間抜けなことだろう…。 長い廊下を右に曲がったその先にあった予期せぬ光景に、思わず言葉を失った。 寄り添う二つの影。 実際は片方が距離を詰めてるんだけど…いや、もしかしたらこれはそうであってほしいという俺の思い込みか。 親しげに話し掛ける笹原と、その隣にいるのは……旭。 楽しげに笑いながらバシバシと肩を叩く笹原に対し、その手を払い除けるでもなく、ただ黙って受け入れる旭。 これは夢じゃないのか?本当に現実なのか? ……おい、お前何してんだよ、旭? ただでさえ大抵の人間は簡単に近寄らせないくせに、 あんだけ嫌悪感丸出しだったじゃん、 それなのに、そんなの、まるで、 「……っ、」 異常な程の鼓動の速さを感じる。 胸がありえないぐらい重く苦しい。 それ以上は見ていられなくて、俺は踵を返してその場から逃げ出した。
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