詰らん意地は蛇の足。

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「嵐……」 変わらぬ調子で早速好物であるらしいパンデリング(黒糖)に思いを馳せる嵐に八城宮は頭が痛くなるのを感じた。 ちなみに彼が密かに気になっているのは6つのテイストが味わえるという、お子様御用達のC-ポップである。 「…で?結局何の用だよ…」 事の成り行きをハラハラしながら見守っていた生徒が仲良くズッコケている中、旭は呆れたように切り出した。 これ以上の無駄な関わり合いは自身の体に毒だと冷静に判断した結果である。 呼び掛けられ我に返った八城宮は、やはり尊大な態度で不機嫌そうに口を開いた。 「どういうつもりだ、テメェ…何で今になって急に嵐と一緒にいやがる?一体何企んでやがるんだ。それともアイツ…平凡から乗り換えたっつーのかよ」 「…アア?」 不愉快そうに眉根を寄せ、最早返事すら億劫そうな旭が気に食わない八城宮は更に食ってかかる。 ヒートアップする熱は止められない。 「まさか逆にアイツに捨てられたんじゃねえだろうな?あ?…ハッ、そうだとしたらとんだ笑い話だな!まぁどっちみちテメェも漸く目が醒めたっつーわけだ。何が楽しくてあんな平凡の隣にいたんだか知らねぇが、お陰で清々した。テメェ等が揃って視界に入ると目障りで仕方なかったからな!ウゼェんだよ!」 鋭い眼光を向けながら皮肉げに口端を吊り上げ、鼻で嗤う様を不審げな表情で眺める旭。 尚も何時にも増して饒舌な八城宮の口は止まらない。 「男同士のくせに仲睦ましげな雰囲気醸し出しやがって!気色悪ィ!…テメェも風紀の野郎も、アイツの周りにいる奴等は全員ウゼェ…鬱陶しすぎて吐き気すんだよ…!ここ最近ずっとだぞ!?ふざけんなッ!」 「――鳴り止まねぇ激しい動機に胸の痛み、奥に広がるドス黒い不快感……どうしてくれんだ!?」 己の心臓を鷲掴みながら激しく訴える生徒会長の姿に、その場にいた一同は唖然とした。 これには胡乱げだった旭も、目を見開き硬直している。 (……どうしてくれんだって、そりゃお前――) 衝撃発言に、ぼんやりとした思考の隅で浮上する答え。 次の瞬間、 「「「「「はあああああぁぁぁあああああ!?!!?」」」」」 正に阿鼻叫喚。 あちこちに飛び交う様々な悲鳴に近い声…中には衝撃のあまり気を失う生徒もいた。 その騒動の中、いち早く状況処理を終えた旭は改めて「やっぱコイツ馬鹿だな」としみじみ感じさせられたのだった。
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