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「おい」
八城宮先輩の呼び掛けに顔を上げると、彼は少し緊張したような面持ちで俺だけにしか聞こえない声で言った。
「今日の夜、お前が来てくれることを願ってる」
そう言えば、昨日言っていた「生徒会で待ってる」という件だろうか。約束は忘れていない。だがここまで真剣な顔で言うということは、何か重要な話をするつもりなのだろうか?
ふと、この間の千草さんの言葉を思い出した。
『それでね、その花火を一緒に見た相手とは永遠に結ばれるっていう ジンクスがあるんだー!どう?ロマンチックでしょ!』
『このジンクスを知って、みこちんが誘う相手は誰なのかなっ?』
言葉の意味を理解して呆然とする俺をよそに、八城宮先輩は媚びを売るクラスメイトをあしらいながら去っていってしまった。
その後も客足は伸びる一方だったが、俺は休憩に入ってもぼんやりしたままだった。
視線を避けるために歩いていたら、自然といつの間にか人気の無い場所へ辿り着いた。近くにあった階段に腰を降ろして、考える。
そう言えば、俺は二人からも告白を受けているのだ。信じられないことに両者共にイケメン。平凡の俺がまったく信じられない事態だ。普段ならありえないと一蹴できるものも、あれだけ真っ直ぐに伝えられたら受け止めるほかない。
後夜祭まで後残り数時間。
とうとう俺は考えなければならないのだ。
誰の手を取るのか、その答えを。
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