詰らん意地は蛇の足。

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「すみません。この生徒、体調が悪いようなので保健室へ運んでも宜しいでしょうか」 「おー、構いやしねぇよ」 走り終えているみたいだしな、と小野原の緩い受け答えを聞くと。 「なっ、」 またもや色めき立つ周囲。 視界の端で間抜けにも、口をあんぐりと開けているカズ。 炎天下で、笹原をあろうことか横抱き(姫だ抱きとも言うが、できればその表現は男相手にしたくない)にした司さんは周囲のことなんか気にも留めずに颯爽とその場から去っていってしまった。 司さんの姿が見えなくなってもざわめきは止まない。むしろ逆に、本人達がいなくなってからの方が大きくなった気がするくらいだ。 「ひゃ~っ!委員長カックイー!」 「俺達のことなんか視界にも入らなかったよな」 「…そりゃそうだろ。仕事なんだから」 そう。風紀の仕事なんだから。 まるで自分に言い聞かせるように、しかし上辺では呆れたような口調で返す。心のどこかで僅かに生まれた何かに気付かないふりをして。 「お前らも、今日はもう帰れ。あー……水分補給はきちんとしろよー」 台本に書いてあった台詞を読むようにひたすら面倒臭そうに言った小野田の言葉を合図に、生徒達が次々と散って行く。 「さて、と……俺達も戻るか」 「そーだなぁ!」 あれだけの距離を恐らく上位の方で走り切ったにも関わらずピンピンとしているカズが先頭を切り、俺達は寮へ向かったのだった。
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