詰らん意地は蛇の足。

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「おっかえりー!ミコちゃん!」 「……」 何でお前がいるんだと、ジットリした眼差しを向けるが喜一はニコニコと笑うだけだった。 まあ、こいつが部屋にいることは珍しくないので放置しておく。 俺はいち早く使い切った体力を回復するために玄関で両手を拡げて出迎えているらしい喜一を通り越し、ソファへダイブ。 「ミコちゃーん。凄く疲れ切った顔してるけど、何かあった?」 妙なところで鋭い喜一のその問いに答えることすら億劫に思えて、ソファにだらしなく雪崩掛かりながら首だけ横に振った。 「本当にぃ~?」 声が近くなった。 ソファの端に佇んだ喜一は、じゃれつくように俺の髪を弄ぶ。くすぐったくて身じろぎするとこんどは耳を撫でられた。一体何がしたいんだと聞いてもどうせ、こいつは笑うだけなのだろうから……放置。 時間だけがゆっくりと流れる。 旭がいない。 ……何が原因で急にあんな不機嫌になってしまったのだろうか。 喧嘩なんて知り合ってから一度もしたことはない。そもそも、これが喧嘩と呼べるものなのかさえも疑問だ。相手が一方的に無視を決め込むというこの状況は、喧嘩の内には入らないのではないだろうか。 どちらにせよ、今のままでは駄目なのだ。 同室者と上手くやっていけないと色々と面倒だからとか、そんなのじゃなくて……。 髪を撫でる手つきが思いの外優しくて、うとうとと心地良い眠気が訪れる。 「ゆっくりおやすみ、ミコト」 聞き馴染んだ喜一のその声を合図に……俺は睡魔に誘われるまま、プツリと意識を手放した。
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