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史はこの学園に来る前の、中学時代からの知り合いだ。
艶のある黒髪に赤縁の眼鏡は伊達。眼鏡装着の理由を聞けば、「知的に見えるだろ?」とな。
何故赤なんだと疑問に思うが、どうせ好きだからとかそんな言葉が返って来るに違いない。変な奴だが俺的にも話しやすい相手だ。
ゲーマーであり、生徒会の仕事を終わらせた後の時間はずっと部屋に篭り積みゲーを消化しているらしくあまり出会うことはない。
そんな彼もどうやら仕事をサボタージュ気味な他の役員のお陰で最近どっさり増えた仕事に、流石にお疲れのようだ。
俺はいつしか隣に腰を下ろした史の愚痴に適当な相槌を打っていた。
「もうほんっと、あの俺様何様バ会長の下で働くとかありえねーんですけどー!!」
「お前何で生徒会入ったんだよ…」
「授業免除」
「やっぱりな」
半ば呆れ気味に問えば、親指をぐっと立てドヤ顔を向けてきた史に苦笑すら浮かばない。
授業免除とは、生徒会役員に与えられる特権の内の一つだ。
仕事を頑張って終らせ、余った時間はゲームに回しているんだそうな。この男はどこまでゲーム命なんだろうか。
「それよか絶賛ぼっちなうの尊はこんな所でぼっちで何やってたんだ、ぼっちで」
「ぼっちぼっち言うなし!」
悲しいやら惨めやら色々な感情を抱きつつ、しれっとした顔の史に噛み付く。すると奴は肩を揺らして笑った。うざい。
「喧嘩でもした?」
「は?」
「いつも一緒にいる森岡…は置いといて、真っ赤な髪した奴が見当たらないからさ」
俺の思考は喜一を通り越して旭に。
喧嘩……喧嘩……?
「喧嘩、ではないと思うんだけどなぁ」
「はあ?何だそれ。随分と曖昧だなー」
だって分からない。
喧嘩をしているのか、していないのかも。
少なくとも旭の機嫌が良くないってことだけは分かるが、何が原因なのかさえ分からないのだ。
「ま、友達は大事にしろよー?お前、今凄く寂しそう」
「え、そう見えるの」
「そう見えるの。いつまでもしょぼくれてんなよ」
「しょぼくれてないし」
「そう見えます。俺分かる」
「嘘だろ」
「うん嘘」
お気に入りだと自慢してきた、何だか高そうなお洒落赤眼鏡を叩き割ろうとしたがあまりにも必死に許しを請うてくるので止めてやった。
「でも、友達は大切にしとけよ」
「…あー、うん」
冷や汗を滲ませながらも急に真面目な顔をする史に俺は、曖昧な返事しか返すことができなかった。
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