261人が本棚に入れています
本棚に追加
「千佳。」
義人の優しい声が聞こえた。
「千佳、ごめん。何の力にもなれなくて・・・」
「義人がどうして謝るの?」
「俺が、千佳を捨てて、千佳を傷つけたから・・・」
千佳は義人に微笑んだ。
「義人と別れなかったら、私はお母さんに会いに行く事はなかったと思う。」
千佳は力強く言った。
「私は、自分の哀れな姿を、お母さんに見て欲しかったって思ってたけど、
本当はそうじゃなかったような気がするの。
私は、義人の愛を失ったとき、お母さんに会いたくなった・・・
何かにかこつけて、結局は本当はわかってたの。
この人は私を愛してるから、絶対に私の言うとおりに、そばにいてくれるはずだって・・・
私、本当は怖かった・・・
一人になるのが、怖かった・・・
義人が家を出て行く時、無様な姿を見せるのが恥ずかしくて、
止めることもできなくて、
きれいな別れ方しなきゃいけないような気がして、
私は本当は別れたくなんてなかったの・・・
すがりついてでも、本当は一緒にいたかった・・・
それが素直に言えなかった。」
千佳につられるように、義人も涙を流していた。
「千佳、ごめん。俺は、本当に自分勝手だ。
千佳と別れてから、千佳の事ばかり気になって・・・
千佳を心配するふりしながら、結局自分が千佳に会いたく、
都合のいいように、千佳を心配するふりをしてただけ・・・」
最初のコメントを投稿しよう!