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「じゃあさぁ、あそこの鏡台見てみ?」
綾瀬が懐中電灯の光を移動させたので、光の先に視線を動かす。
自然に崩れたのか、誰かに壊されたのか分からないが、壁に大きな穴が開いており奥の部屋が鏡台を通して見える。
「………うわッ!」
俺は思わず声をあげた。
小さな女の子が穴の向こう側から此方を見ている。
俺は鏡台とは反対方向を懐中電灯で照らす。
確かに穴は在るが、女の子は居ない。
再度鏡台を見ると、女の子が手を壁に置き、壁を乗り越えようとしていた。
「綾瀬!逃げるぞ!」
俺の言葉を皮切りに、俺と綾瀬は逃げ出した。
「おい。こっちに来ようとしたって事はついて来る可能性が有るぞ。」
綾瀬の一言で俺は後ろを見た。
白い靴下をはいた小さな足が、手前側の部屋の入り口から見える。
俺は躊躇う事無く、塩を投げつけた。
俺の行動に全てを察したのか、綾瀬も塗香やら酒やら米やら逃げながら投げる。
家の外迄逃げると直径2cm程の水晶の珠を取り出し、嫌な物を全部水晶の中に閉じ込めるイメージをしてからその場に棄てた。
綾瀬も俺と同じ事をしていたが、顔が強ばっている。
「おい!早く逃げるぞ。」
「馬鹿!アイツ追いかけてきてるぞ。見えないのかよッ!下手に逃げると逆に厄介だぞ。」
綾瀬の視線の先を俺も見たが、俺には何も見えない。
綾瀬には悪いが、少し安心した。俺には憑かなかったって可能性が出来たからだ。
「あれ?でも、アイツなんかさっきより薄くなってるし…気のせいかな?弱々しくなってる。」
首を傾げながら綾瀬が家の方に戻る。
気がフレたのかと思ったら、綾瀬は骨塩や菩薩樹の枝、あまつにレッド・マスクの邪眼迄空中に投げつけている。
「やっぱり弱ってるぞ!もぅ、消えそうだ。」
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