ひとりきり

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ひとりきり

    茂雄はいつも独りだった。 友達を作らず、恋人を作らず、知人を作らず。 16歳の春には親からも逃げ出して独りで居た。 常に何かに怯えていた。 たまに一人でブツブツと何かを言っていた。 茂雄はテレビを見なくなった。 茂雄はパソコンを持っていなかった。 茂雄は携帯を捨てた。 茂雄はブレーカーを落とした。 茂雄は雨戸を閉め、光が入ってこない様に入念に目張りをした。 茂雄は暗闇の中でやっと安堵した。 茂雄は振り返った。 茂雄は叫んだ。 茂雄は泣き叫び、物を投げている。 茂雄の気がふれたらしい。 茂雄は走った。 茂雄はどこまでも走った。 茂雄は影に怯えているみたいだ。 茂雄は最初から全部気付いていた。 だから茂雄は自殺した。    
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