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ある恋人達の話
町子さんは俺の大切な人だ。
恋人や彼女と言うと、ちょっと気恥ずかしい。
町子さんは笑顔が可愛くて、気もきく。利発な女の子だから老若男女問わずに愛される。
そんな町子さんの大切な人になれて俺は嬉しい。
町子さんはよく「将来、子供は2人欲しい」と言う。
ちょっと、重いなと思いながらも「俺は3人欲しいな」と言っておく。
そう言うと、町子さんは恥ずかしそうに笑う。その笑顔がとても可愛い。
俺は月に一度情緒不安定になる。
そんな時、町子さんはとても優しく俺を受け入れてくれる。
「お互い様だよ。」と町子さんは言うけれど、俺は申し訳なく思う。
逆に町子さんは月に一度とても陽気になる。
そんな時、俺は町子さんと一緒にはしゃぐ。
その時の町子さんはいつも以上に可愛くて、俺はちょっと困ってしまう。
その間の町子さんはよく男に告白される。
「付き合ってる人が居るから、ごめんね。」
と、町子さんははっきり言う。
告白された事を俺が知ってしまった時、町子さんは困ったように笑いながら俺の頭を撫でて「大丈夫だよ。」と言うんだ。
その時、ちょっと泣きそうになるけど…町子さんには秘密。
町子さんは最近蒼空を見上げて何かを考えている。
悩み事が有るなら相談に乗ってあげたいし、力になってあげたいと思う。
「平気だよ。」と笑う町子さんが少し心配だ。
このところ町子さんは俺をよく見つめている。
その瞳があまりに不安そうなので無意識に頭を撫でていた。
「どうしたの?」俺は首を傾げて町子さんに訊いてみる。
「あのね…」町子さんは口をぱくぱくさせるが言葉が出ないらしくて、今にも泣きだしそうな顔になっていた。
俺はどうすれば良いのか分からないから、町子さんを優しく抱き締めて背中を撫でてみる。
町子さんは覚悟を決めたのか、強張りながらも大きく息を吸って、俺の目を真っ直ぐ見つめて言った。
「あのね…私、妊娠したみたいなの。絶対相手は貴方なの。それだけは確かなのよ。」
俺は驚いた。
町子さん、俺が戸籍上は女だって知ってるよね?
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