エアプレイ

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エアプレイ

    「………あ。」 急に目の前の靄が取れた様な気がした。 東京のとある駅のホーム。 俺は電車に乗る為に列に並んでいた。 隣の女性がチラチラとこちらを見ている。 失礼な人だ。 ところで俺は今の今迄何をしていたんだっけ? 耳に携帯電話をあてたまま立っているのは分かる。 でも、何が何だか分からない。 人の歩く音や話し声、物が擦れる音… 俺は半ばパニックになりながら携帯電話の画面を確認する。 切れてしまったのか、携帯電話は待ち受け状態だ。 携帯電話の着信履歴を確認。 携帯電話の発信履歴を確認。 俺は周りの人にバレない程度に首を傾げて携帯電話を閉じた。 ……ガタンゴトン。 ………ガタンゴトン。 …………パァ――――――ン…。 …ざわ、ざわ、ざわ…。 ……カツン、コツン、カツン、カツン、コツン…。 ………。 ……………意識にまた靄がかかってきた。 ………ピルルルルルルルルル…。 …あ、電話だ。 「もしもし?……え?あ、ごめん。電波が途切れたみたいでさ…」 隣の女性がチラチラ見てくる。 本当に失礼な人だな。 俺はムッとしながらも友人と話を続けた。  
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