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誘拐
23時ぴったり
誘拐犯が指定したビル
赤い印の所に立つ
一人息子が誘拐された。
いや、拉致かもしれない。
時代錯誤とも言えるが、大切な息子は人質にされ、犯人に金銭を欲求された。
うちは平均的な家庭だから何千万、何億なんて金額は払えない。家のローンも車のローンも払い終えていない。
頭を悩ませていたら、犯人が要求してきた金額はたったの30万。
昨今流行りの詐欺が要求する金額とほぼ同じ。
確かになんとか払えると思う反面、息子の値段はそんなものかと心の片隅でムッとする。
でも、30万で事が済むなら一々警察に御世話になるのも…なんて考えてしまうあたり、悪さをする奴等の思惑にハマっているのだろう。本当になんて奴等だ。
22時45分。
犯人の指定するビル前に到着。
…くそッ。赤い印なんて何処に有るんだ。見渡しても、それらしいものが無いじゃないか。
犯人からの電話はまだ無い。
自力で探すしかないのか?タカシ、お前の為にパパは頑張るからな。
とりあえず、ビルの周りを一周してみる。
赤い印は無い。
犯人からの電話も無い。
心臓がぎゅッと締め付けられ不安な気持ちになる。
22時52分。
もう一度ビルの周りを歩いてみる。
…あ、………これか?
沢山の人に踏まれ、剥がれかけている赤いポイントシールが地面に貼られている。
他に赤いものは無い。不安だけれどシールの上に立ってみる。
22時59分。
携帯が反応した。非通知での着信。
通話ボタンを押して耳に携帯をあてる。
「はーい。ちゃんと着きましたねー。パパえらいでちゅねー。約束通り、お金とタカシちゃんを交換しましょー。」
……いちいちムカつく言い方をする。やっぱり警察に………
「あ、俺だよ。俺。俺。今、タカシを返してもらったなんて、ウッソだぴょーん。タカシちゃんのママー?今ね、パパの携帯を勝手に使わせて貰ってますー。はいー。タカシちゃんとパパを返して欲しかったら、××ビルの青い印の所に2時35分迄に来てくださいー。金額は5万で良いよ。あ、でも……パパみたいにお金を封筒にいれないでね。せめてビニールに入れといて。2万円分損したから。じゃね、バイバーイ。」
…さて、タカシちゃんとパパさんを屋上迄運びますか。
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