覚  醒

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鋭い爪が容赦なく傷だらけの少年アルトへと降り下ろされた。 それをアルトは辛うじて剣で弾いたが、勢いまでは殺せず、体ごと薙ぎ倒されていた。 既にエイダにもアルトにも立ち上がる力は残ってはいなかった。 けれど二人とも動かない体を何とか持ち上げようと、歯を食い縛る。 が、既に持つ魔力は枯渇し、肉体はボロボロ。異形に立ち向かえる要因はこの二人にはもはやない。 それでも立ち上がろうとするのは、ただ自分達の後ろにいる少年を守りたいから。 だが勘違いしてはいけない。 少年は決して弱くはない。寧ろ精神的にはエイダやアルトより強いかも知れない。 けれど、少年は異形に対抗する術を持ってはいなかった。 この世界では誰もが当たり前に使える魔法を発動させる力――魔力を有していないのだから。
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