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~戻ってきたパイロット~
ちょっと悲しい話ですが。
今から50数年前、日本がまだ戦争中だった頃にあったことです。
皆さんは航空母艦(空母)って知ってますよね? 船から飛行機を飛ばす奴です。
ある日、敵と遭遇して、空母から戦闘機が何十機も敵に向かっていったそうです。
そして、その殆どが撃墜されてしまったそうなんです。
それから何日かしてからの夜、格納庫に何人ものパイロットがやって来ました。
整備兵たちは「御苦労さまだなあ」と思って声をかけようとすると、そのパイロット達はみんなズブ濡れだったそうです。
「あ、これはイカン!」
と思い、整備兵たちは毛布やらなんやら持っていこうとしたんですが、そのとき整備兵の班長が、
「おまえら! 待て! 何もするな!」
と言って、直立不動で最敬礼をしたんです。
整備兵たちは訳もわからず班長を見ると、班長は敬礼したままボロボロと大粒の涙をこぼしていました。
「どうしたんですか? 班長!」
とある兵隊が聞くと、
「お前たちわからんのか? あの方達はXX少尉とその小隊の方達だ!」
と言いました。
「!」
それを聞いて、兵隊たちもすぐさま全員整列をして、敬礼をしたまま動きませんでした。
そうなんです。
彼らは先日出撃して撃墜されたパイロット達だったのです。
整備兵たちが格納庫の隅に全員並んで敬礼しているのに気づいたパイロット達は、ただ黙って深々と頭をさげ、格納庫から消えていったそうです。
「班長、今のはいったい?」
と兵隊が聞くと、班長はあふれる涙をぬぐいもせず、
「無念だったのだろう、敵艦隊に攻撃する前にみな撃ち落とされ、死んでも死にきれんのだろう。そして、大事な機を壊し、一生懸命整備をした俺達に謝りに来たのだろう」
と言ったそうです…。
パイロット達はみな18から25才くらいの若者だったそうです。
今からほんの50数年前には、本当の戦争がありました
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