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「これ、苦手なんだよな」
空軍パイロットにとって、空母はいつまで経っても慣れなかった。滑走距離の短さは恐怖だった。
ツカサは歯を食いしばると、エンジンスロットルを最大まで押し上げた。
背中に振動が伝わる。耳にはエンジンの爆音が轟く。
不意にカタパルトが動き始めた。機体は急加速をして空中に投げ出された。
機体の姿勢を真っ直ぐにとりつつ、機速と高度を取る。
その時、すぐ隣をメルトの機体が通り過ぎた。風圧で機体が揺れた。
「ツカサ、遅いわよ!」
「あのな、オーバーテク満載の機体と比べないでくれ」
「言い訳は聞かないわよ」
機速が十分に取れた。ツカサはメルトの鼻先をかすめて前に出た。
「危ないじゃない!」
「お互い様だ。メルトだって気流を乱しただろ」
「はいはい、すいませんね」
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