第1章 ツカサ・瓜生

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ツカサは操縦桿を左に倒し、水平飛行から降下しつつ離れた。 警報は消え、振り返ると、敵機は3番機について行っている。 「中尉、敵機がそちらに!」 「クソっ、今日の貧乏クジは俺かよ」 「すぐに助けます」 機体を反転させると、エンジンを最大出力まで押し上げた。 旋回時は、エンジンノズルを両方上へ向ける。だから、旋回能力は著しく良かった。 敵機の先頭は3番機の回避行動にぴったりくっついている。そして距離を縮めていった。 敵機の機首がきらめき、紅い残像を残して、敵の機銃弾が3番機に吸い込まれるようにして命中した。 3番機は爆発。 ベイルアウト(脱出)は確認できなかった。 ツカサは胃が握りしめられる感覚がした。 「フォーよりワンへ。ジャクソンが落とされました。ベイルアウトは確認できず」 悲しんでいる暇はない。今はただ、戦うことに集中するしかない。 「ツカサ、状況は不利だ。撤退するぞ」 「ネガティブ。このまま逃げてもどうせ食われます」 「そうか……。ツカサ、死ぬなよ」 「分かりました」 ツカサは操縦桿を握りしめた。
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