見えない世界でみつけたもの。

12/18
前へ
/140ページ
次へ
 電話は確か、入ってすぐにあったはず。手探りで電話を探すが、それらしきものに中々触れる事が出来ない。  そう思っていたら、何かが俺に手に触れた。電話? 思った瞬間、何かが割れる音が俺の鼓膜を震わしていった。 「な、なんだ……何が落ちた?」  足元に冷たい感触が触れる。靴下に染み込んでくるこれは……水? どうやら花瓶を落としたみたいだ。電話の横に一輪挿しの花瓶があったのを思い出した。でも今はそんな事はどうでもいい。  電話はどこだ……俺は手探りで電話機を探す。  こんな事なら携帯を解約するんじゃなかった。俺にはもう必要ないと思ったが、まさか必要になるとは思いもよらなかった。 「確か……この辺だったと思うが」  サイドボードに手を付きながら探していると、指が何かに触れていた。螺旋状に巻かれたコード――これは、電話のコードだ。 「あ、あった! 痛っ!」  何かを踏んだ感触があった。  そこから広がる痛みに、何かが俺の足の裏に刺さったのだと理解したが、痛みが増していく一方。  多分、血が出ているのだろうな。痛みがあるのに、傷口さえ見る事が出来ない。  何が起こったんだ? 俺は何を踏んだんだ? 分からない……怖い。でも、俺の事はいいんだ! 「っ! ……電話、を」  手はまだコードを掴んている。コードを辿り、受話器らしい硬いものが手に触れた。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加