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電話は確か、入ってすぐにあったはず。手探りで電話を探すが、それらしきものに中々触れる事が出来ない。
そう思っていたら、何かが俺に手に触れた。電話? 思った瞬間、何かが割れる音が俺の鼓膜を震わしていった。
「な、なんだ……何が落ちた?」
足元に冷たい感触が触れる。靴下に染み込んでくるこれは……水? どうやら花瓶を落としたみたいだ。電話の横に一輪挿しの花瓶があったのを思い出した。でも今はそんな事はどうでもいい。
電話はどこだ……俺は手探りで電話機を探す。
こんな事なら携帯を解約するんじゃなかった。俺にはもう必要ないと思ったが、まさか必要になるとは思いもよらなかった。
「確か……この辺だったと思うが」
サイドボードに手を付きながら探していると、指が何かに触れていた。螺旋状に巻かれたコード――これは、電話のコードだ。
「あ、あった! 痛っ!」
何かを踏んだ感触があった。
そこから広がる痛みに、何かが俺の足の裏に刺さったのだと理解したが、痛みが増していく一方。
多分、血が出ているのだろうな。痛みがあるのに、傷口さえ見る事が出来ない。
何が起こったんだ? 俺は何を踏んだんだ? 分からない……怖い。でも、俺の事はいいんだ!
「っ! ……電話、を」
手はまだコードを掴んている。コードを辿り、受話器らしい硬いものが手に触れた。
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