見えない世界でみつけたもの。

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 見えるもの全てが世界だと思っていた頃。俺は世界を全て見ていると思っていた。  でも、それは違った。  俺はまだ見ていない世界があった。 「雄太、起きてる?」 「ああ……静か。起きてるぞ」  声が聞こえる。この声は静だな。 「雄太……髪ボサボサだよ」 「マジで? あちゃー」  静の声が聞こえる。笑い声が上から聞こえてくる。  頭に何かが触れた。優しく撫でるように俺の頭を触るこの感触は、静の手だろう。だが、俺にはそれが見えない。  声の主が誰で、どんな顔かは知っている。  俺の幼なじみで静。それでも俺には顔は見えない。 ――今の俺は視力を失っている。 「雄太……はい着替えだよ」 「……ありがとう」  俺の手に触れるこの感触は、いつも着ている制服だ。いつも、俺の着替えを用意して手に載せてくれる静。  最初は服を着るのに苦労したが、今はやっと慣れきた。見えなくても出来る事は自分でしたい。  それが俺の考えだ。  どうしても出来ない事は最初は手伝ってもらう。そして、覚えてからは自分の力でやってみる。  静には随分と世話になっている。俺が一年前、事故で視力を失ってから、ずっと俺の目の代わりをしてくれている。
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