31人が本棚に入れています
本棚に追加
授業も終わり――放課後。
今日も一日、何事もなく終わった。静は俺と一緒に帰っている。
俺の隣を歩く静は、俺の手を握っている。帰りだけは必ず、俺の手を握る。
家に帰り着くまで……。
それは”あの”事故に関係あるのだろう。あの事故は俺達が帰っている時に起きたのだから――。
あの日、いつもの帰り道でそれは起きた。俺達に突っ込んでくる一台の車。その暴走する車のスピードは、歩いている人間では交わせるわけもなく、俺は咄嗟に静を庇って車と接触してそのまま気を失った。
次に気付いた時、俺は病院のベットで寝ていた。頭には包帯、そして目にも包帯があった。
そこで言われた一言――それで俺の人生は変わった。
光のない世界で生きる事。それは、その時の俺には想像が付かなかった。それよりも、俺の隣で泣いている声だけが聞こえる静が気掛かりだった。静はずっと「ごめんなさい」と俺に向かって繰り返していたからだ。
それは、自分を責めている言葉。自分のせいで俺の目が見えなくなった、と思っているのだろう。
俺は、静を助けたくて、助けたんだ。だから自分を責めないで欲しい。そう願っても静は一向に泣き止まなかった。
そして今でも、静は自分を責めているだろう。俺にはそう感じる――あの日からずっと……。
最初のコメントを投稿しよう!