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時刻は17:00を回ろうとしていた。
その間私はずっと、永遠の眠りについた母を眺めていた。
「「杏奈ッ!」」
声がしたほうを振り向くと伊織と友達の咲(サキ),慎也(シンヤ)がいた。
「おばさんは!?」
『伊織…。亡くなっちゃった』
「えっ!?」
『青信号で横断中にトラックにはねられたって。即死って言ってた…』
「杏奈…」
-ギュッ
突然、伊織に抱き締められた。
「泣けよ。悲しいだろ?苦しいだろ?」
『伊織…私泣けない』
私はそっと伊織の胸元を押し、離れた。
「えっ!?どうして?」
「伊織。今の杏奈に何も聞かないであげて。泣くことさえ忘れた杏奈に…」
「ど-ゆ-ことだよ…?咲」
「頼むからまだ何も聞くな。俺たちにも」
「慎也まで…2人してなんだよ。俺は杏奈の彼氏なのに知らないっておかしいじゃねぇかよ!!」
『伊織ッ!!』
-ギュッ
今度は私が伊織を抱きしめた。
『ごめんね、伊織。でも、本当に待ってほしいの…絶対、話すから…だからお願いします。待ってください…』
必死の懇願だった。
でも、伊織は待ってくれると信じていた。
「しょうがねぇから待ってやるよ。でも絶対、杏奈の口から聞くからな!」
『はい!』
どこにでもある口約束を私は果たしたかった。
例え何年後、何十年後先になっても――
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