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「おい、礼を言った相手を殴るなんてどんな挨拶だよ」
殴られた拍子にベンチから落ちたアルバは、眠そうな顔で頬をさすりながら立ち上がり、ベンチに座る。
ついでに大きなあくびを一つ。
そんなアルバにフィリアも勢いよく立ち上がり、顔を真っ赤にしたまま怒鳴る。
「あんたいつから起きてたのよ!?」
「俺の話は無視ですか?」
「そんなのいいから答えなさい!!」
人の話を聞かないフィリアに、アルバはため息を吐いてから答える。
「お前が屋上に来て、『昼寝だけなら待っててくれてもいいのに…全く、人への気遣いを学びなさいよバカ………寂しいじゃない……』と言ってた辺りから……」
とりあえず横蹴りが顔面に飛んできた。
しかし、今回は頭を後ろに逸らしてそれを避ける。
「ほとんど最初からじゃない!!起きてたら起きてるって言いなさいよね!!」
蹴りを避けられたフィリアは悔しいのか、またも顔面に蹴りを繰り出す。
だがそれも簡単に避けるアルバ。
「それと誤解を招く付け足しをしてんじゃないわよ!!!」
二回も避けられてムカついたフィリアは、若干殺気の隠(こも)った前蹴りをまたまた顔面に放つ。
しかしそれも頭を下げて避けられる。
そして、
「白」
一言、そう言った。
今の二人の状況は、フィリアの蹴りがアルバの頭上にあり、フィリアは立っていてアルバは座っている。
ついでに言うと、フィリアはスカートである。
なので、
「ッッ!!!」
フィリアは先ほどより顔を真っ赤にして足を引っ込め、両手でスカートの裾を抑えた。
「あっ、あんたねぇ……!!」
「さて、からかうの飽きたので寝ていいか?」
アルバはまた大きなあくびをする。
自覚は無いにしろ、アルバは人をおちょくるのが一級品である。
「………………」
「ん?何故黙って右手を俺に向ける?そして何故お前の身体から危険度MAXな魔力が出ている?一つ言うがお前の魔術はシャレになら…」
5分ほど、屋上は真っ赤な地獄になっていた。
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