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「……………んっ…」
心地よい感覚を感じながら、フィリアは目を覚ました。
真っ白な天井が視界に入ってくる。
「ここは……」
上半身を起こしたフィリアは、自分がベッドに寝かされていることに気づいた。
清潔感がある真っ白なベッドに真っ白な毛布。
様々な薬の香りが混ざりあった独特の匂い。
フィリアが寝ているベッドを囲む、うっすらと透けた白いカーテン。
多分ここは保健室なのだろうとフィリアは思った。
「私…なにしてたんだっけ?……」
確か屋上に行って、あのバカに鉄槌(てっつい)を浴びせようとしたけど一発も当たらなくて、ムキになってたらいつの間にか……
「そっか……気絶してたんだ……」
そう分かった瞬間、自重気味に笑みがこぼれた。
(何やってんだろ……あいつのペースに乗せられた挙げ句、魔力切れでぶっ倒れるなんて……)
情けない、と思ってしまうフィリア。
(けど…あんなに怒ったことなんて、今までで無かったな…)
ローズや他の事で怒ったことはあるが、あそこまで逆上して怒ったことは今までなかったフィリア。
そしてアルバと会話して攻撃している時、フィリアは怒りとは別の感情を抱いていた。
ローズやナンパをしてくる男たちからは感じない、別の何か。
(………………あっ、そっか……)
考えていると、フィリアは一つの答えにたどり着いた。
(私…楽しかったんだ…)
そう。
フィリアはアルバといて楽しいと感じていた。
自分よりも遥かに強いと感じさせたアルバに。
自分をあんなに感情的にさせたアルバに。
楽しいと感じた自分。
「………馬鹿みたい………」
そう言いながらまた笑みがこぼれる。
今度は自重ではなく、そんな自分が可笑しいかのように。
そうしていると、保健室のドアがガラガラと音を立てて開いた。
フィリアは音がしたほうを見ると、カーテン越しから人の影は見えるがそれが誰なのか分からない。
すると入って来た誰かはフィリアがいるベットに近づいて来た。
(誰だろう、保険の先生かな?)
誰か分からないので若干緊張しながら近づく誰かを待つフィリア。
そして誰かはフィリアがいるベットのカーテンを開いた。
するとそこにいたのは先生ではなく、先ほどまでと変わらない姿のアルバが、右手に色とりどりの果物が入ったかごを持って立っていた。
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