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「なんだ、もう起きたのか。普通なら五六時間は起きなくて当たり前なんだがな」
そう言ってアルバはフィリアのベットの横にある背もたれのない椅子に座り、右手に持っていたかごを近くの棚(たな)に置いた。
「……なんであんたがここに来んのよ」
隣に来たアルバを若干睨みながら言うフィリアだが、声に元気がない。
どうやら相当疲れているようだ。
そんな睨んでくるフィリアを気にする様子もなく、かごに入ったリンゴを手に取るアルバ。
「俺はお前と違って常識のあるからな。勝手に暴れて倒れたお前を心優しくここまで運んで、ついでに食べ物と水分を持ってきてやったんだ。ほら」
アルバは手に持ったリンゴをフィリアにゆっくりと投げた。
投げられると思っていなかったフィリアは、驚きながらも飛んできたリンゴを受け止めた。
「魔力切れになると心まで疲れてしまうからな。消化にいいもの食べてゆっくり寝てろ。あと水分も摂っとけ。お前けっこう汗掻いてたから」
アルバはポケットから水の入ったペットボトルを取り出して、果物の入ったかごの横に置いた。
「………お礼なんて言わないわよ」
「心配すんな、期待してないから」
そう言ってアルバは、ふぁ~と大きなあくびをする。
「……あんたまだ眠いの?さっきも寝てたくせに」
それに朝もフィリアが来たときに寝ていたアルバ。
それなのにまだあくびが出るほど眠いとなると、どんだけ睡眠不足なんだと思うフィリア。
そんなフィリアに「さっき?」と頭に?マークを浮かべるアルバ。
そしてあ~と一人納得する。
「そうか、お前は寝てたから時間感覚が分かんないのか」
「?」
「今はもう夕方の5時だぞ」
「………………………はぁ!?」
最初は何を言われたか分からなかったフィリアだが、数秒思考したあと驚いた顔で叫んだ。
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