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エルクがいつも好んで着る白い服は赤く染まり、右肩の辺りが切り裂かれたように破けているが怪我をしていないらしく血はでてない。
顔にも血が飛び付いているのでその顔で微笑むエルクに少し恐怖も感じた。
今のエルクの姿を見て固まっているアルバに、微笑みを崩さないままエルクは自分の身なりを見て納得した表情になる。
「あ~大丈夫ですよアルバ。心配しなくてもこれは私の血じゃないですから」
それを聞き少しホッとしたアルバだったが…
「これは先生を斬った時の返り血ですよ」
アルバは言葉の意味が理解出来なかった
「不意討ちしたのですがやはり私たちの先生ですね、かわされてカウンターをもらいましたよ」
何も言わないアルバをよそにエルクは苦労話をするように語りだす。
「そのあと少々手こずりましたが綾祢(あやね)が手伝ってくれたのですぐ終わりました。まったく、弟子を斬るなんて酷い先生ですね、大人しく斬られれば簡単で「何…言ってんだよ」
エルクの言葉をアルバが遮った。
アルバはまだエルクの言葉が理解出来なく、困惑した表情で続ける。
「お前が先生を斬った?…おい、そういう冗談やめろよ。そんなわけないだろ?だって俺たちは「まぁ確かに家族同然の存在でしたね」
今度はエルクがアルバの言葉を遮った。
「先生は記憶のない私たち、捨て子だった綾祢を家族として迎え入れて育ててくれました。他にもこの世界の事や自分の力の使い方、お金の使い方や料理の仕方など色んな事を教えてくれました。」
エルクが言ってることは本当だ。
二人が言ってる先生はここにいる三人を育てた父親であり、色んな事を教えた先生でもある。
少なくともアルバはその事に恩を感じていて優しい先生の事をとても大切な家族と思っている。
他の二人もそう思っているはずだ。
そう思っているからこそ先ほどのエルクの言ったことが理解出来ない………理解したくなかった。
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