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「今までは逃げられていたけど、今日は逃がす気はない」
そう言ってローズは左手をパチンッと鳴らした。
するとアルバの背後から無数の茨(いばら)がメキメキと生えだし、行く手を阻むように茨の壁が出現した。
(植物系魔術……そのうえ術名破棄か。特待生の肩書きは伊達ではないみたいだな)
いつもは抜き身の剣で斬りかかってくるだけだったのにな、と心の中で嘆息するアルバ。
「どうやら僕は君を少し甘く見ていたみたいだ」
そんなことを考えていると、ローズは胸ポケットに差してある薔薇を右手で抜きとった。
「だから今回は………少し本気を出すよ」
その瞬間ローズの空気が変わった。
先ほどのふざけた(ローズにとっては大真面目)空気とは違い、相手を倒すべき敵として見た"戦う術(すべ)と意味を理解した者"が纏(まと)う空気を放っている。
「逃げられるとは思わない方がいい」
ローズは右手に持った薔薇を横に振った。
すると薔薇は一瞬にして形を変え、植物の姿のままレイピアのような武器へと姿を変えた。
「今日僕はフィリアを君の魔の手から救い出す。そして………」
鋭い眼光(がんこう)でアルバを睨み付けながらレイピアの切っ先を向け言い放つ。
「フィリアと仲睦(なかむつ)まじく愛し合っていたあの日々を取り戻す!!!!!」
そんな日は一度も無かった。
あってもローズの妄想以外の何ものでもない。
(…なるほど、そこまでの仲だったのかこの二人は。なのに婚約者であるあいつが見知らぬ男に付きまとっているからそんな変な誤解が生まれたと…………非常に面倒だ)
いろいろ合っているがいろいろ間違っている。
「さぁ、君も武器を出したまえ。そして見せてあげよう……僕のフィリアへの愛がどれだけ強いかと…!!!「どうでもいいわ」
スパーンッッッ!!!!!という音と共に、ローズの頭にハリセンが炸裂した。
「お前ら今一様授業中だって分かってるか?分かっているならこんなとこでドンパチやらかすな。分かってないならどっかで常識を学んでこい」
ハリセンが相当痛かったらしく、ローズは膝から崩れて叩かれた箇所を両手で押さえている。
ちなみに薔薇のレイピアは手から離れた為か、元の薔薇に戻っている。
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