序章 親友からのお願いです

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 その日の帰り、調べものをするために放課後の図書室に立ち寄ってみると、図書委員の一人である咲崎楓が受付を担当していた。  彼女は一年の時から俺や裕二のクラスメートで、知り合いの女の子の中では仲が良い部類に入る。  それは誰とでも仲良くなれる彼女の気さくな性格故のものだと俺は考えている。 「新山くん? 図書室に用事?」  俺の姿を認めた咲崎に声をかけられる。 「ちょっと調べもの。咲崎は今日の当番なのか」 「うん、新山くんが裏切ってくれたおかげでなかなか大変だよ」 「あはは……すみません」  一年の時、俺は咲崎と一緒に図書委員を勤めていた。  そのこともあって、二年生に上がって間もなくの委員決めの時に、今年も一緒にやろうと咲崎に誘われたのだが、俺がどうしようか迷っている間に裕二に先を越され、そのまま咲崎と裕二がうちのクラスの図書委員に決まってしまった。  裕二は間違いなく咲崎が目当てで、仕事も真面目にするようなタイプじゃないから、咲崎としてはあまり喜ばしいことではなく、あの時のことを根に持っているのかもしれない。
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