1223人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、なんとなく気まずい雰囲気のまま、俺は目当ての本を取って適当な席に座る。
図書室には俺と咲崎の二人だけ。
咲崎はデータの整理だろうか、パソコンの画面を見ながらカタカタとキーボードを叩いているのが見える。
仕事の邪魔をしては悪いと思い、自分の調べものに集中。
求める情報を探してペラペラとページをめくっていると、意外なことに、咲崎の方から俺に話を振ってきた。
「生徒会の仕事、忙しいのかな?」
「まぁ……多少は」
「そっか……」
会話が続かない。
おかしいな、普段咲崎と話す時はこんなことないんだけど……二人きりだからか?
とりあえずなにか話題を探さないと、雰囲気に呑まれそうだ。
「あのさ、咲崎は好きな人っているの?」
それを聞いた咲崎は目を丸くする。
唐突すぎたよな、これで『いない』って答えが返ってくれば裕二にもまだ望みがあるんじゃないかと思って聞いてみたんだけど。
「それは恋愛的な意味で……なのかな?」
「そうそう」
「……うん、いるよ」
いるのか……普段の態度から察するに裕二でないことは確か。諦めさせるべきだろうか。
咲崎が「でも……」と続けたので、俺は再びそちらに注目する。
「ボクの想いはきっと叶わないと思う。……ううん、そもそもこれは、願ってはいけないことなんだ」
そう言った咲崎の表情は笑っていたけど、心は笑っていない、そんな気がした。
願ってはいけないなんて、どんな事情があるにしろ、そんな悲しいことってあるのだろうか。
咲崎は困惑する俺を一見してから、なんでもないというように、再び作業に戻っていった。
最初のコメントを投稿しよう!