現実

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不安を胸の内に収めこみ、婦長の後ろを黙って着いていった。 明るいはずの廊下が、真っ暗に感じた。 それほど、絶望感に麻痺していた。 婦長は躊躇う事なく、最短の道のりを淡々と歩いていた。 婦長:「ここが山川さんの部屋です」 猛:「・・・・はい」 婦長はスライド式の扉を横へ引き、親方へ声を掛けた。 婦長:「山川さん? 高橋さんが来てくれましたよ?」 そうやさしく言葉を纏めた婦長は続け様に猛の方へと目線を合わせた。 婦長:「高橋さん、どうぞ?」 猛:「は、はい」 やっと親方の元へたどり着いたと言う安堵と今から目の当たりにする現実に表情が強ばっていた。 ベッドの上に横たわる親方は別人のように痩せていた・・・ 猛の方を見つめ、小さく頷いた。 よう来たな~ なんて顔してんねや・・・ まるでそう語りかけてるようであった。 猛:「親方・・・ なんでやねん! あんとき約束したやん! 話ちゃうやん!! なあ?」
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