現実

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しばらく経ち、手の治療も終わった頃、詰所の前を歩く兵頭の姿が確認できた。 猛:「リョウさん・・」 兵頭:「猛・・ 親方は? お前、どないしたんやその手?」 猛:「すんません。 大した事ないです。 親方は向こうの部屋で寝てます」 兵頭:「親方は無事やったんやな! よかったわ」 猛:「・・・・・」 兵頭:「猛? 何やその【眼】は? どないした? 親方に何かあったんか?」 猛:「リョウさん・・ 親方に会いに行きましょう」 兵頭:「猛・・」 兵頭はそれ以上、言葉を発する事はなかった。 猛のその雰囲気を見て、全てを悟ったのだろう。 兵頭の眼には【覚悟】が漲っていた。 兵頭を連れて、さっき通った廊下をゆっくりと歩いた。 その廊下はさっきより更に暗く感じた。 親方の部屋の前に到着し、深く深呼吸をし、言葉を発した。 猛:「ここです。 リョウさん・・ 親父を見てやって下さい」 猛は小さく微笑んでそう呟いた。 兵頭:「ああ」 (親父?) 猛が悟りを開いたような顔をしてるのが深く印象に刻まれていた。
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