現実

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溢れでる涙を抑えようと、咲は懸命に我慢した。 抑えようと思えば思う程涙が止まらない・・・ そんな連鎖に我を失いつつあった。 そんな咲を目の当たりにし、ミナもまたぶつけようのない不安に襲われていた。 あれから何時間経ったのだろうか・・・・ そこにいた3人には関係のない事であった。 広い空間に啜る音だけが、大袈裟にこだましていた。 とその時であった。 輝々と輝く、赤い手術中のランプが静かに消えた。 目線をそこに合わせていた兵頭はいち早くその状況に気が付き、勢い良く立ち上がり口を開いた。 兵頭:「終わった・・・」 言葉のない重い空間にい続けた為、兵頭の言葉は呟く程度やったにも関わらず、二人に完璧に伝わった。 二人も一斉に立ち上がり、手術室の目の前まで移動した。 しばらくして、主治医である木下が姿を現した。 木下:「まだ予断は許さない状況ですが、取り敢えず、手術は成功です。 しかし・・・」 その【しかし・・・】に3人の不安は集中していた。
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