現実

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木下:「少し出血が多すぎるんです。 今は落ち着いてるけど、急変する可能性もある」 歯切れの悪い言葉でまとめ上げた木下であったが、3人は何も言葉を返す事が出来なかった。 そこに立つ、1人の男が吐き出すオーラに言葉を忘れたのだった。 木下は自らの命を削る思いでこの手術を成功させたんやろう・・・ 限界まで気力を振り絞り今という現実を迎えたんやろう・・・ 3人は、そんな雰囲気を身体で感じていた。 咲:「先生、ありがとうございます・・・」 さっきまでの涙を内にしまいこみ、咲は感謝を口にした。 それに答えるように木下も口を開いた。 木下:「あとは猛君を信じるだけや・・・・」 その言葉を祈るような気持ちで黙って受け入れたミナと兵頭・・・ 3人の気持ちが一つになったのが分かった。 木下の後ろから、担架に乗せられた猛が3人の前を通過した。 そこに横たわる猛は、痛々しい姿で、意識なく目を瞑っていた。 咲:「お兄ちゃん!! 分かってるやんな? ちゃんと帰ってこなあかんねやで!! これ以上、ミナさん心配さしたらあかんねやで!!」 咲の叫びを聞き、ミナは思わず猛の前まで走り出していた・・・・
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