現実

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数秒の沈黙が随分と長く感じた。 言葉に詰まっているのか、言い出し難いのか? 木下は沈黙していた。 その沈黙を打ち破り木下は話始めた。 木下:「兵頭君・・・ 猛君がこんな状況の時に言い出し難い話なんやが・・・ 今朝から山川さんの容体が思わしくないんや・・・ 一番に猛君に言わなあかん話なんやが・・・ 無理な状況やからな」 一言一言を噛みしめるように木下は話した。 兵頭:『・・・・・・なっ?』 覚悟していた以上の言葉に絶句してしまった。 そして、それらが造り上げた空気が沈黙を造った。 兵頭:「そんな事、そんな事あり得んやないか… 先生、何とかしてくれや!! こんな時にそんな話やめてくれや!! 何でなんや! 何でこないえげつない試練を与えるねや!!」 普段クールな兵頭が珍しく熱く叫んだ。 小川は叫ぶ兵頭を傍目に今起こっている事態がとんでもない事やと、今さらながらにパニックに陥っていた。 木下:「とりあえず、病院に戻って来てくれないか?」 木下はこんな状況は慣れてます・・と言わんばかりに兵頭の怒りを往なすようにタンパクな言葉を並べた。 兵頭「・・・・・分かりました」 納得出来ない気持ちをすりつぶし兵頭は頷いた。 木下:「すまない・・・」 それに対して、木下もまた色んな感情を抑え切れなくなった・・・ 木下のその言葉には、色んな意味が込められていた。 自分の不甲斐なさ・・・ 山川に対する思い・・・ そして、現実を突き付けられた相手への労い・・・
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