現実

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病院に到着し、木下と待ち合わせた。 姿を表した木下は昨夜、猛の前で対面した木下と別人に感じた。 木下:「兵頭君、呼び出してすまなかった 行こうか・・・」 冷静を装い、語り掛けてきた木下であったが、その表情に余裕はなかった。 兵頭:「親方、どないなんすか?」 それしか言葉が見つからなかった。 その言葉に木下は歩を止め、兵頭の方へ視線を移した。 木下:「くやしいけど・・ これだけは口にしたらあかんて・・ 山川さんがここに来た時に自分で決めてたんや・・ やけど・・・」 そこまで言葉を振るいだし、数秒の沈黙で間を作った。 その沈黙は空気を更に重くさせた。 木下の目は更に鋭い光を放ち、厳しい視線となり兵頭へ襲い掛かった。 兵頭:「・・・・・・」 (先生の決意を肌で感じる。 言いたい事は分かってる。 やけど、それを口にするんは、先生にとってはそれだけ重い事なんやな・・・) 木下:「山川さんは危篤や・・ もう処置の施し様がないんや・・ どないしょもない・・ どないしょもないんや・・」 歯を食いしばり、その目には涙が溢れていた。
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