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何とかならんのか・・
何とかしてくれや・・
そんな気持ちをこの場で口にする事なんか出来なかった。
自分なんかより、木下は親方に対して我の全てを出し尽くしたんや・・と
俺がそんな人に意見をする権利なんかないんやと・・
木下の全身から放出する悲しみを垣間見て、兵頭はそう思い至ったのだった。
兵頭:「先生・・
親方の所に連れてって下さい。
猛の分まで俺が・・
先生の決意は俺がしっかり伝えますから・・」
木下:「俺は猛君との約束も守れなかった・・・」
コブシを強く握り締め、木下は俯いたまま、前を向けずにいた。
そんな木下を見て、掛ける言葉もなく、二人の間に重い空気が流れた。
何でこんな状況になってしもたんやろう・・・
親方と猛と笑いながら雑談していた、ついこの前の記憶を思い出し、胸が締め付けられるような感覚に陥っていた。
強く握りしめた拳を緩め、木下は前を向き呟いた。
木下:「はよ戻っとかな、山川さんが悲しむな・・・」
その一言がどんな意図を持っていたのかは分からない。
分からないが、兵頭は黙って頷いたのであった。
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