現実

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兵頭:「先生を責める奴なんか誰も居ませんよ・・。 先生が最善を尽くしてるって事は、誰の目から見ても明らかです。 絶対親方も感謝してますよ」 木下は首を横に振りながら、言葉を返した。 木下:「最善を尽くす? 違う。 最善なんて言葉はこの世に存在せんねや・・ そんな言葉はただの自己満足や・・。 僕は山川さんに対して今まで何をしてきた? 何十年も世話になって、山川さんの変化に気が付いてやれんかった・・ ぼ、、ぼくは医者として・・」 木下はそれ以上の言葉を言えず涙で濁した・・ 兵頭:「・・・・・」 (俺も同じや・・なんで親方の違和感に気が付いた時に、すぐ言うてやれんかったんや・・・ もしかして、もっと早よ分かってたら・・・) 木下は俯き、涙を隠していた。 兵頭もまた、そんな木下を目の当たりにし、汲むモノがあった。 自分を責め続ける木下に、覚悟を感じた。 そして、親方もそんな木下やからこそ、全てを任せる事ができたんやろう。 兵頭が病室に到着し、小一時間が過ぎた時、親方の容態が悪化した。 木下は己の全てをぶつけるように最後まで自分の職務を全うしていた。 無情にも、親方の病気が回復する事はなかった。 親方はその日、天国へ旅立った・・・。
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