現実

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兵頭は俯いたまま、言葉に詰まっていた。 猛:「リョウさん・・ どないしたんですか?」 兵頭:「猛・・・」 猛:「はい?」 沸き起こる悲しみを、どうやって抑えるのか・・ そんな初歩的な事が、頭から全て刈り取られた。 頭の中が悲しみに支配された瞬間、涙が止まらなくなっていた。 兵頭:「お・・やかたは・・ あか・・・かった・・んや・・・・」 最早、言葉として成立していなかった。 兵頭はその場で膝を折り、全身で悲しみを表現していた。 猛:「どないしたんですか? 痛つっ・・・ リョウ・・・さん?」 そんな兵頭の姿を垣間見、猛は自分の身体を無理矢理起こそうとしていた。 動かすだけで、激痛が走る。 やけど、そんな痛みはどうでも良かった。 なぜ今、兵頭がこんな状況に陥っているのか・・ 不安が少しづつ大きくなっていた。 咲:「リョウさん・・・ウッウッウッ」 そんな兵頭の姿を目の当たりにし、咲も感情を抑えきれずにいた・・ 猛:「何が・・どないなってるんや・・ リョウさん・・咲・・? なあ? ミナ・・どないしたんや?」 ミナ:「・・・・・」 ミナは首を左右に何度も振り、両手で顔を押さえたまま、無言を貫いた。 兵頭:「猛・・ 親方は、、、、もう、、、目を、、、目を覚ます事は、、、、ないんや・・」 猛に目線を合わす事なく、今にも消えそうな涙声で兵頭はそう呟いた。
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