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猛のその気持ちに何とか答えてあげたいと思いつつ、どうしてもそれがリスクである事に悩む木下であった。
それでも、今の猛に対して【断る】という選択肢を選ぶ事がどうしても出来ずにいた。
木下:「ちょっとキツイかも知れないが・・・・
車椅子で移動しよう・・・・
担架で山川さんの所に行っても・・・・な?」
猛:「木下さんおおきにです・・・・」
腹部から血が滲んできていた。
その部分を押えて、顔を引きつらせながらも満足そうな表情を浮かべていた。
そんな姿を見て、医者としての選択が果たして正しかったのか・・・・
そんな葛藤に犯されながらも、不思議と後悔は生まれて来なかったのである。
木下:「準備してくるから、大人しく待っててくれるか?」
猛:「・・・・・はい」
木下はそう会話をすると、病室を後にした。
再び病室は、沈黙に包まれ、咲の啜り泣く声が響いていた。
猛:「咲・・・・
もう泣くな・・・・
お前はそんな弱い人間やないやろう。
親方はそんな姿のお前を望んでへん。
親方はこれからも【ここ】に居続けるんや。
俺らに怖いもんなんかない」
取り乱して、我を失いつつあった状況の中、色んな思い出が走馬灯の様に頭を駆け巡った。そして、その思い出が猛に勇気を与えた。
目標を失った船のようにさ迷う感情も、さらに上の頂きを目指すよう親方に言われ、船頭を修正できた気がした。
親方の為にも、立ち止まったらあかんねや・・・・
そんな決意が冷静さを取り戻させていたのだった。
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