現実

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病室を出て、車椅子はゆっくりと移動し始める。 車椅子を乗せたエレベーターは地下へ向かって動き出した。 季節と反比例して肌寒い位のその場所は、日の光は微塵も入らない空間であった。 その一室の前で車椅子は立ち止まり・・・・ 重そうな扉を木下が引き開け、中へと入っていく・・・ その空間には、白いベッドに横たわり、白い布を顔に被せられた状態の親方がいた。 そっとその白い布を取り除き木下が囁くように口を開いた。 木下:「あれだけの状態やったんや・・・ 苦しかったはずやのにな・・・ なんてええ顔してんねや」 木下の言葉を聞き、猛は衝撃に駆られながらも口を開いた。 猛:「リョウさん・・・ ちょっと手貸してくれや どうしても親方に話があるんや・・・」 兵頭は木下の方へ視線を移し、その全権を委ねた。 木下は小さく頷いた。 後の責任は僕が取るから・・・ そう言わんばかりの表情をしていた。 共鳴するように兵頭も小さく頷き、視線を猛の方へ戻したのだった。
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