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親方の躰は病院の地下からひっそりと運ばれた。
すぐ近所の場所で通夜は営まれる予定であった。
木下は、猛の今の状態で果たして通夜に行かせていいのか、迷っていた。
しかし・・・・・
その言葉だけは言えなかった。
言えるはずがない。
例え、その後の彼に何か後遺症が発症してしまったとしても・・・・
木下:「猛君・・・・
体調はどないや?」
猛:「正直、痛くないって言えばウソになります。
やけど、親方はこんなんの比やない位苦しんだんやって・・・
これ位の痛みで痛い言うてたら、親方に笑われますよ」
木下:「山川さんと猛君は症状的にも全然違うって・・・」
そう猛の言葉をソフトに否定しながらも、木下は驚きを隠せずにいた。
(ホンマ・・・
昔の山川さんを見てるようやな・・・
考え方とか、精神論とか・・・
同じ事を言いよる)
猛:「治らないのかって不安に襲われる方が絶対キツイです。
どんだけ痛くても、いつか回復するって思えば、なんぼでも耐えれますから・・・・」
木下:「その通りやな・・・
やけど、君の今の痛みは相当なもんやと思う。
今日の通夜も車椅子から立ち上がらず、僕と一緒に行動するって条件以外では了解出来ない・・・
約束してくれるかい?」
猛:「・・・・・・・」
木下:「猛君・・・
約束してくれ・・・
山川さんから託された君に万が一の事があったら僕は・・・」
そこまで話して、木下は言葉を詰まらせた。
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