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香取:「いや・・・
こちらこそ感情的になってしもてすまん。」
さすがの香取も冷静さを失い、その感情を猛にぶつけてしまった事を後悔したのか、冷静さを取り戻し、そう呟いた。
猛:「いや・・・
俺の方こそ、肝心な事を言う勇気がなかっただけかも知れません・・・・。」
香取:「・・・・・いや
お前を責めるつもりで言うたんやない。
今日は俺もアガリや・・・
山川が待ってるからな・・・」
悲しみを隠すように・・・
そして独り言のように、香取は呟いた。
猛:「それより、マサカズの件・・
きっちりお礼させて下さい」
香取:「その話は俺からお詫びしたい位や・・・
大きな組織の歯車は時に脱線するからな・・・
一人脱線しても、何もなかったかのように動き続けるんや」
猛:「・・・はぁ」
香取:「すまんすまん。
また今日の夜会おうや」
猛:「・・・・はい」
香取の言いたい事が全く把握出来ていなかったのだが、不思議と頭の中で整理されていた。
その意志が自分ではないのではないかと思える程、研ぎ澄まされていた。
香取と電話を切り、兵頭に支えられるように、車椅子へと移動した。
ほんの数時間前まで痛さで意識が朦朧とする事もあったのに・・・
今はそれ程の痛みを感じなくなっていた。
たった数時間でこんな回復、有り得ない事なのだが、痛みよりも気持ちが前に出てたのだろう・・・・
木下と約束した通り、車椅子での移動のみを条件に、集会所まで運んでもらった。
木下が設定した時間より、一時間程早く到着したにも関わらず・・・
現場は悲しみの空気で覆われていた。
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