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啓子:「・・・・・・」
啓子は猛の【眼】を見て、驚きを隠せずにいた。
(この眼・・・ なぜか懐かしい記憶が蘇る。
あれは小さい時に見た、親分さんの眼と同じ・・・・)
猛:「親父は絶対、言い訳をしない人です。
きっと誤解されたままになってたんやないかって・・・・
俺はそう思います」
啓子:「一つ聞いてもいいかしら?」
猛:「・・・・はい?」
啓子:「私の父の事を【親父】と言ったわよね?
それって、どう言う意味かしら?」
猛:「どういうも何も・・・
俺をここまで育ててくれたんは親方ですから。
俺がこの世で親父と呼べるのは山川の親方だけですから」
その言葉を聞いて、脈絡を辿る事は出来なかったが、妙に納得させられた。
啓子:「・・・・・・そう」
啓子は、小さく頷き、そう返事をした。
猛:「俺は啓子さんが羨ましいです」
啓子:「羨ましい!?
あなた、変な事を言う子ね?」
猛:「変な事やないです。
俺にとって、親方は全てです。
親方に拾ってもらえんかったら、今の俺は絶対存在しません・・・
生きてる事が楽しい事やて・・初めて知る事が出来たんです」
そう語る猛の眼から、光が解き放たれていた。
口から放たれる言葉より、眼が何よりも親方との信頼関係を語りかけていた。
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