別れ

40/60

3402人が本棚に入れています
本棚に追加
/780ページ
啓子:「・・・・・・」 啓子は猛の【眼】を見て、驚きを隠せずにいた。 (この眼・・・ なぜか懐かしい記憶が蘇る。 あれは小さい時に見た、親分さんの眼と同じ・・・・) 猛:「親父は絶対、言い訳をしない人です。 きっと誤解されたままになってたんやないかって・・・・ 俺はそう思います」 啓子:「一つ聞いてもいいかしら?」 猛:「・・・・はい?」 啓子:「私の父の事を【親父】と言ったわよね? それって、どう言う意味かしら?」 猛:「どういうも何も・・・ 俺をここまで育ててくれたんは親方ですから。 俺がこの世で親父と呼べるのは山川の親方だけですから」 その言葉を聞いて、脈絡を辿る事は出来なかったが、妙に納得させられた。 啓子:「・・・・・・そう」 啓子は、小さく頷き、そう返事をした。 猛:「俺は啓子さんが羨ましいです」 啓子:「羨ましい!? あなた、変な事を言う子ね?」 猛:「変な事やないです。 俺にとって、親方は全てです。 親方に拾ってもらえんかったら、今の俺は絶対存在しません・・・ 生きてる事が楽しい事やて・・初めて知る事が出来たんです」 そう語る猛の眼から、光が解き放たれていた。 口から放たれる言葉より、眼が何よりも親方との信頼関係を語りかけていた。
/780ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3402人が本棚に入れています
本棚に追加