二人の行方

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この日、Y社では営業会議が営まれていた。 去年、急遽営業部長として、現場から昇格した兵頭も、その職に慣れ、会議を指揮していた。 長野:「部長、C社を説得せん限り、その事業は難しいと思うんですが・・・」 兵頭:「う~~ん それは分かってるんやけど、どうやってC社を振り向かすか・・・やな」 社長である猛から、戦略は任されていた。 だからこそ、何が何でも成功させなければならない・・・ 焦れば良い回答は生まれないと理解してるのと反比例して焦る気持ちを抑える事が出来なかった。 啓子:「兵頭部長、C社を攻めるのであれば、田所さんにお願いしてみては如何ですか?」 兵頭:「うん? 田所さんの所はC社とはコンペのはず・・・・ こんな話をしたらどやされるんやないか?」 啓子:「少し前、田所さんとお会いした時、C社の話をしてました。  会社としては、コンペに違いないですけど、実際はそうではないとおっしゃってました。 田所さんであれば、権限あるお方ですし、きっとC社を振り向かす事が出来ますよ」 兵頭:「・・・・・・・・」 兵頭は啓子の話を最後まで聞き、啓子のセンスに驚きを隠せずにいた。  偶然とは言え、数ヶ月前に話ししていたC社の話を完全に記憶し、その場で公言してきた。 なぜ、その場でC社の話になったのか? 偶然という言葉で片付けるのは簡単であり、ごく自然なのだろうが、それはきっと、今日に至る為の複線やったのだろうと・・・・ 偶然そんな話になるのは、近い将来にそれが何らかの必要な情報になり得る可能性があるから・・・・。 そう考える事により、全ての雑談がプラスに働くのである。 そういった考え方が出来る人間がどれだけ存在するか・・・である。 ただ生きてるだけの【あの頃】には、そんな事考えもしなかった・・・・・ なるようにしかならないと諦めていたら、そんな気持ちには一生なれなかったやろう・・
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