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『・・・・・・そうか』
猛の迷いない言葉を聞いて、逆に押される形となったミナの父親は、短く返事をするのが精一杯であった。
猛:「親父は死んでしまいましたけど・・・・
その意志は確実に継げてるて・・・・今はそう確信してます。
親父が全う出来なかった全てを今、自分の手で成功させようと頑張ってます」
『君のお父さんはすごい人物やったんやね?』
ミナの父親は、猛の臆する事なく返事をするその姿に、いつの間にやら、魅せられていたのかも知れない。
咄嗟に出てきた言葉が、労いの言葉であったのだろう・・・
猛:「すごい?
いいえ・・・
私の親父はそんな言葉で片付ける事が出来ない程、器の大きい人間でした」
『・・・・・・・・』
ミナの父親は、その絶対的存在であった親方に敬意を表したのか、いつしかその顔に、猛の言葉を聞く姿勢が感じられるようになっていた。
猛:「親父の跡を継ぐってのがどれだけ大変か、身を持って体感しました」
猛は笑顔でそう言うと、視線をミナへと移し、言葉を続けた。
猛:「お父さんにとって、ミナさんはどんな存在ですか?」
その質問を猛から父親に投げかけた瞬間、ミナは驚きを隠せずにいた。
そんな質問を猛がするとは、思いもしなかった。
もちろん、父親も面食らった表情になっていた。
しかしながら、冷静さを取り戻し、父親は口を開いた。
『誰にも渡したくない、最愛の娘だ』
迷う事なく、そう断言した。
猛:「そうですか・・・・
お父さん?
僕にとっても、ミナはかけがえのない存在です。
やけど、僕がどれだけミナを大事に思っても、お父さんのその気持ちには勝てないと分かってます。
誰よりも親の愛情が欲しくて、お父さんのそんなミナを思う気持ちに飢えてました。
せやから、ミナの事が何より羨ましく思う・・・・・
僕はお父さん・・・あなたに認めてもらうまで待ち続ける。
そんな覚悟で今日お邪魔しました」
猛の言葉を最後まで聞き入れ、隣のミナは涙を浮かべた。
同時にミナの父親も小さく頷き、猛に向けて口を開いた。
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