意識した日

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「あ、三咲だ」 「本当だ。アイツ、電車通学だったんだな」 「……」 【意識した日】 学校帰りの電車内。ドアの前で手すりに掴まるピー子の姿を見つけた。 べつに声かけてやっても良かったんだけど、俺等の間に距離あったし、光高生の比率がやけに多く、何より声をかけてやる義理もないから、大蘭に着くまで『気付かないフリ』をすることに決めた。 そうと決まれば、向こうが俺に気付かないよう吊革を掴む腕で顔を隠し、更には寝たフリでやり過ごす。 電車が駅を発ち、そう時間が過ぎない内に目の前に立っていた光高の男子2人がピー子の存在に気付いた。盗み聞きするわけじゃねぇけど会話は自然と耳に入ってきて、特に印象強かったのは、 「アイツ、笑わねぇよな」 って、そんな言葉。 確かに笑わねぇ。笑わねぇ以前に表情が乏しい。 いっつも無表情でボケーとしてて、意識がべつの世界に行ってますーみたいな、そんな顔。 今だって窓の外、遠ーくの方を眺めながら、自分が話題に出されていることも知らず、当然、俺にも気付いてない。 「三咲ってクラスでも浮いてるよな」 「あぁ、ギリギリ西村とカミジが唯一の話し相手? なんであの2人が三咲を気にかけてるのか知らないけど」 「同情じゃね? どう考えたって三咲とあの2人はタイプが違うし。同情じゃなければ、ただの気まぐれ」 「だよなー、一緒にいて笑わない奴なんて面白くねぇもんな」
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